【Day012】デザイン思考は、組織運営になじむのか。

2023年12月2日(土)

 

デザイン思考を組織に取り入れるという考え方がある。

 

デザイン思考は、「知っている」レベルにとどまり、「理解している」というレベルに達していないことが多い。

 

現場レベルでは、デザイン思考の有用性が浸透したとしても、それを組織全体の課題解決に対して、デザイン思考の活用を試みても、上席に却下されることが多いのが実情と思われる。

 

会社組織の管理者(部長であれ係長であれ。また創業社長の場合は特に)は、すでに定義された(明らかな)課題や問題の早期解決を望んでいるにもかかわらず、デザイン思考のプロセスの特性として、すでに定義された課題や問題に対して、本当にそれが課題なのか、問題なのか」と根源的な疑問を投げかける。

 

「いますぐ、これをやれ」と上司が命じているのに、

「それって、そもそも、課題の設定が間違ってませんか?」

と部下が言い出し、デザイン思考のプロセスを回し出したら、組織は崩壊する。

 

時間と金が毎分、どれだけの価値をもって失われているのか、知っている創業経営者なら、即刻お前はクビだ、と言って、労働紛争が勃発しかねない。

 

たしかに、より良いUX、CXを提供できれば、おのずと利益は生まれる。

 

この方向性は間違っていない。

 

しかし、「より良いUX、CXを提供できれば」という条件付きだ。

 

組織経済学の立場で考えると、従業員が「より良いUX、CXを提供する」ために、デザイン思考のために投下された時間と金以上の価値を創出することは稀だと思われる。

 

端的に言えば、ただ理屈をこねまわして、上から目線でかっこつけて、結果として現場を混乱させて、時間と金を空費して終わる。そして責任は取らない。

 

デザイン思考そのものは、素晴らしい思考プロセスであるが、人間は基本的に楽して金を稼ぎたいのであるから、デザイン思考になじむ人材は稀有だ。組織運営にまで拡張して適用するのは、避けた方がよいだろう。